こんにちは、みのやま(@DrMinoyama)です。
今回の記事では、
初期研修医におすすめの本を厳選して紹介します。
後輩の研修医から
「何から勉強すれば良いかわからない」
という意見をよく聞きます。
大事なのは、
「どの診療科に行っても使える内科的知識を叩き込むこと」
と伝えています。
ローテート中に上級医からたくさん指導されますが、全科横断的に使える知識とその診療科でしか使わない知識とが混ざっていますよね。
極端なことを言うと、腎臓内科で「腎生検の手順」を頭に叩き込んだところで、腎臓内科に進まない限り役に立ちません。
特定の科でしか活かせない知識でなく、診療科横断的に使える知識を優先的に学びましょう!
今回は、この5分野を中心におすすめする本を紹介します。
それではどうぞ!
内科の基礎
内科の基礎としてお勧めする本は2冊あります。
まず紹介するのが、内科レジデントの鉄則です。
本書では、内科で抑えるべき内容を30項目に分けて解説しています。
1項目につき5-10ページほどでコンパクトに解説されていて、初期研修医でもとっつきやすい内容になっています。
1項目ずつなら読むハードルも低くて良き
最初に要点を掴むのには良い本です。
医師国家試験で得た知識を臨床に結びつけるための初めの1歩を踏み出せる書籍で、全ての研修医にお勧めします!
ただ、各項目に関してコンパクトにまとめられている分、内科レジデントの鉄則だけではカバーしきれない部分もあります。
もう一歩深く学びたいと思った時におすすめなのが、総合内科病棟マニュアルです。
貧血や低Na血症、肝機能障害、血小板減少など、よく出くわす症候に対して鑑別診断、提出すべき検査項目、アセスメント、治療方針など細かく解説されています。
非専門分野に関しては、この本に載ってあることを実践できれば文句なしと言えるくらいには詳しく載ってます(実際に私が研修医のときは、この書籍通りに内科管理を行うだけで褒められることが多かったです!)
詳しく書かれているのに、白衣のポケットに入るサイズなのもありがたい…!
バイブルの如く持ち歩いてました。
裏表紙に輸液の電解質の表や食事についてまとめた表を貼り付けて、「この本さえ持ち歩けば病棟業務に困らない!」と言えるような自分だけの1冊を作っていました。
本当におすすめです。
心不全
心不全が既往にある高齢者は本当に多いんです。
慢性心不全、大動脈弁狭窄症、心房細動などなど。
循環器難しいし、みんな心不全持ちだし、やだなあ・・・。
循環器には苦手意識があり、心臓系の既往持ちの患者に当たる度に萎えてました()。
そう思った時に循環器の扉が役に立ちました。
研修医・非循環器専門医向けに、循環器領域の最低限知っておいて欲しい知識を解説してくれる本です。
この本の良いところは2つ。
一つ目は、専門性の高い内容はほどよくテキトーに、非専門医も含めて全員がマスターすべき内容をシンプルにでも徹底的に解説してくれているところ。
二つ目は、循環器系の緊急事態でも、循環器の医師が到着するまでにすべきことが丁寧に書かれているところ。
たとえば、
胸痛を訴えている患者に対して、
一般的に4つの緊急疾患(ACS、気胸、大動脈解離、心タンポナーデ)をまず否定するのは、前述の内科レジデントの鉄則などでも解説されていますが、
・ST変化を見逃さないためのTips(右側誘導、背部誘導)
・もしACSに遭遇した時に非循環器内科医としてどのようなアクションを取るべきか
まで詳しく簡潔に解説してくれるのが本書です。
私は初期研修2年目秋に循環器内科を回る時に購入したのですが、
もっと早く買っておけばよかった・・・
と後悔したのを覚えてます。
心不全に関しておすすめの書籍2冊目は
です。
心不全で使う薬剤について1つずつ丁寧に解説されている本です。
・利尿薬ってどうやって使い分ければいいの?
・降圧薬の種類ごとに何を気を付ければいい?
初期研修が始まるとこんな疑問にぶつかると思います。
この本では、利尿薬、降圧薬、心保護薬、強心薬について、各種類ごとに注意点、強み、エビデンスなどを4-6ページでまとめて解説されています。
たとえば、利尿薬であれば、
フロセミドは、昔から心不全に対して使用されており効果は確実にあるが、電解質異常(低Na、低K、重炭酸貯留)、腎機能障害に気を付けて使うべき。
アルダクトンは、利尿薬の中ではK保持してくれるだけでなく、fantastic fourとして心保護、腎保護にも役立つ。
といったことを系統だてて学べます。
この本のおかげで自分なりの「最適解」をもって診療に臨めるようになったかな
おすすめです。
感染症
どの科で研修するとしても感染症には必ず対応する必要がありますので、研修医のうちに基礎的な内容は学んでしまいましょう!
感染症のおすすめは2冊。
抗菌薬の選択の仕方についてとことんシンプルに解説してくれる本です。
感染症って学ぶことが多くてどこから手をつければよいか分からないですよね。
抗菌薬の作用機序、カバー範囲、耐性菌、アンチバイオグラム、臓器別の移行性・・・
感染症の知識って膨大すぎてキリがない・・・。
と悩んでるそこのあなたに朗報!
わかる抗菌薬、使いこなす抗菌薬はとにかくページ数が少ない!
感染症に関わるいわゆるヲタクな知識を一切省いて、臨床で絶対に使う最低限の知識(ですが、最重要な知識)を優先的に解説してくれます。
感染症の治療で大事なことは以下の3つです。
・Focus(どこの臓器が感染していそうか。)
・Targetとなる菌(経験的治療で緑膿菌まで含めて治療する?)
・治療期間(肺炎:5-7日間、蜂窩織炎:臨床症状に合わせて、etc.)
感染症は学ぶべきことは多いですが、この本ではまず上の3点に絞って解説されています。
Simple is the Best
筆者も「勇気をもって絞りに絞った(専門家からは怒られるかもしれない)」と言っているくらいですが、はじめて感染症を学ぶにはこのくらいのボリュームがちょうど良いです。
また、著者と初期研修医の対話形式なのでポップに学べるのも魅力です。
続いて紹介するのは感染症プラチナマニュアルです。
感染症プラチナマニュアルにはほぼすべての感染症について細かいエビデンスも一緒に詳しく解説されています。
臨床現場で出くわした感染症について、3つの要素(Focus、Targetとなる菌、治療期間)について感染症プラチナマニュアルで辞書的に調べるようにしていました。
出会った疾患は3要素をマーカーでなぞるようにしてたよ
臨床で注意すべき点(合併症)や使用する薬剤の量(例:ABPC/SBT 1.5g~3gを6時間ごと)なども、すごく丁寧に解説されているので、臨床的にとるべきアクションについて大変参考になります。
通読するというよりは、辞書的に調べるのに向いている本です。
地道に調べ続けるだけで、感染症の臨床能力はつくと思います!
白衣のポケットに入れている先生、わりと見かけるよ
輸液
輸液の本でおすすめなのは、これだけ輸液です。
医学生~初期研修医向けに輸液について解説している本です。
国家試験では驚くほど出題されないのに、病棟業務が始まるとひらすら輸液をいじります。
初期研修医になったとたんにコメディカルから様々な質問をされます。
「先生、流速はどうしますか?」
「え?流速?」
「メインはヴィーンでいいですか?」
「メインってなに?VeenFってなに?」
病棟業務初日は、輸液についてわからないことが多すぎて焦ったのを覚えています・・・。
(「何がわからないか」もわからないレベル)
この本では、輸液についての水、電解質、以前に点滴の仕組み(クレンメ、メイン、側管、どんな場合にCVが必要なのか)など病棟業務をするうえで必要な知識を基礎から解説してくれている点で重宝します。
すごく基礎的な話からスタートして最終的にはそれぞれの症例において使うべき輸液製剤、流速まで学べるようにできています。
食事摂取困難、誤嚥性肺炎、敗血症性ショックで搬送された患者 → VeenF<80mL/h>
慢性心不全あり、夜間の呼吸困難感、血圧は保たれていそう → 5%Glu<10mL/h>
などなど、わかるようになってきますよ!
私は、まずこれだけ輸液を読んで、各疾患ごとに適切な輸液を大雑把に学びました。
輸液について本格的に学ぶと奥が深いしキリがないので、その後の知識は各診療科の先生(主に腎臓内科、循環器内科、総合内科)に聞いたり、総合内科病棟マニュアルを読んだりしながら地道に学んでいきました。
輸液は各先生ごとの匙加減の要素もありますが、上級医と輸液について議論できるようになる前段階としてこれだけ輸液で「基本の型」を作りましょう!
人工呼吸器
病棟業務が始まると必ず診療科に1人くらいは、人工呼吸器がつながれている重症患者がいます。
呼吸器がつながった患者のベッド搬送のために研修医1人だけ呼ばれたり、
「呼吸器のアラームが鳴ってるんですけど!どうしますか?」
ってcallが来たり
人工呼吸器といえば、アラームなりっぱなし、ボタン多すぎて訳わからない、重症患者なのでどうにかしないといけないけどどうやって操作すればよいのかわからない、
これを地獄って言うんだな・・・
医療現場にいる以上、いつ患者が急変するか分からずそんなときに人工呼吸器はつきものです。
そして、人工呼吸器をそもそもつけるべきか判断するのも医師の仕事です。
そして、重症患者がいる診療科(内科、救命科、麻酔科、心臓外科)では初期研修医でも人工呼吸器から逃げることはできないので、研修中にマスターしちゃいましょう!
紹介する本は2冊あります。1冊目は、竜馬先生の血液ガス白熱講義150分です。
呼吸状態を把握するうえでまず見るのが血液ガスです。
そんな血液ガスを圧倒的にコスパよく学べるのが竜馬先生の血液ガス白熱講義150分です。
血液ガスって簡単そうで難しいです。
突然ですが、以下の質問にパッと答えられますか?
代償
アニオンギャップの解釈の仕方
A-aDO2ってなに?
意外と理解が難しい部分ですが、コンパクトに体系的に解説されています。
タイトル通り3時間ほどで通読できるので、はじめの1歩に最適なっ本です。
おすすめの活用方法としては、
①午前か午後かまとまった時間で通読してみる。
②臨床で解釈に困った血液ガスに出くわしたら本書に立ち返る。
③再度通読して知識を整理しなおす。
人工呼吸器の管理についても、目の前の患者が困っているのは酸素化?換気?、まずはここからスタートするので、血液ガスと切っても切り離せません。ぜひ読んでみてください。
続いて紹介するのは、Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理です。
学び始める前は、人工呼吸器ってそもそも何が起こってるのかわかりませんでした。
そんな初学者にもわかりやすく、
・人間の呼吸器の生理学
・人工呼吸器のモードについて
・どんな患者にどのモードの呼吸器設定を当てはめればよいか
が解説されています。
患者の血液ガスの値が悪いときに、どこがどう悪いのかを分析し、人工呼吸器上ですべき介入についてわかるようになります。
とても分かりやすいなと感じたのが以下の2点です。
一つ目は、人工呼吸器で設定すべきボタンについて、1項目ずつ解説されている点です。
はじめは訳の分からないアルファベットが並んだ機械・・・という印象でしたが、通読してからはそれぞれの設定の意義を理解しながら操作できるようになりました。
2つ目は、人工呼吸器でよく見る異常波形をまとめたページがある点です。
何か普段と違う波形を見たときには、本書に立ち返って呼吸状態のどこが悪いかを分析するようにしていました。
初期研修中にICU科をローテートする場合には、その前に読んでおくとよいでしょう!
まとめ
以上、私が研修医におすすめする本を紹介しました。
内科の基礎
心不全
感染症
輸液
人工呼吸器
どの本を読めばよいか悩んでいる研修医の先生の参考になればうれしいです。
みのやま